メキシコのニアショアリング動向:
~一次・二次ニアショアリングという視点で整理する~
今回はメキシコのニアショアリングの動向について、一次・二次ニアショアリングという視点で整理していきたいと思います。
まずは、メキシコのニアショアリングが注目される背景についておさらいをします。
- 中国リスク
中国との貿易に依存している状態では政治的な関係が悪くなると経済にダメージを追う可能性があるため、中国依存を辞めようという動きがされ始めています。
- 地政学
遠隔地に拠点を置く(オフショアリング)よりも近くに拠点を置く(アメリカやカナダにとって)ことで素早い対応やオンタイムでの管理が可能になります。
- 米国との距離
物理的な距離が近いため、特にサプライチェーン面でのメリットが大きいです。
- USMCA
この制度を利用することで恩恵が受けやすくなります。
一次ニアショアリングとは何か
ここで、冒頭で申し上げた一次・二次ニアショアリングというものについて少し話をしたいと思います。
一次ニアショアリングとは、製造機能を他国に移転するという考え方です。
メキシコへの日系企業の進出ラッシュは2014年ごろから始まり、2019年(パンデミックが起こる前)頃まで続いてきました。2019年後ももちろん進出はございますが、勢いは少し弱くなったような印象です。
そして現在までは主にメキシコへの製造移転が行われており、製造コスト・物流の物理的な米国への近さのメリットを最大限に生かしている形です。
まだまだメキシコにおける製造業の拡大が見込まれているようです。
(参照元JETRO)
https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2025/6c432b57b0f01131.html
成功と失敗の分かれ目
メキシコへの製造業の移転の成功、失敗の分かれ道としてはやはり現地スタッフの教育及びメキシコの法律・習慣の理解だと感じております。
現地スタッフの教育がうまくいっていないケースでは、現地から出来上がるものやデータの質が低く、日本人の駐在員もしくは社長がチェックや細かいところまでの業務に入ってしまい疲弊することが起こっています。もちろん日本人のレビューは必要にはなりますが、頻繁に細かい部分まで日々チェックをしているような場合は現地の方がなかなか育っていないことからその状況が発生している場合が少なくありません。
また、メキシコの商習慣や文化を理解していないことで本社と現地の働き方のギャップを作ってしまい、「人が定着しない」「職場の雰囲気が最悪」「誰も会社のために仕事をするという意識がない」ということがよく起こっています。
そのためこれらのことも考慮に入れながら柔軟に対応していくことが大切です。
二次ニアショアリングとは何か
2次ニアショアリングとは製造機能に続き、バックオフィス業務を段階的に移管するという考え方です。
メキシコでは製造を移管してから10年以上たち、独立法人としても安定してきている企業が多い状況かと感じております。
もちろんすべてではありませんが、一部の企業では次の段階(バックオフィス・管理機能の移管)ということが始まっているようです。近年、米国では人件費の高騰、人材不足、物価上昇ということが毎年起こっています。そこで、米国法人の業務を一部メキシコに移管する(ニアショアリングを利用)する企業が出てきています。
具体的なオペレーションとしては、最終判断・レビュー機能・管理は米国に残しつつ日々の簡単な繰り返しのような業務はメキシコへの法人、もしくはSSCを設立してメキシコに業務を落とすというものです。
SSC・管理集約
上記のような流れから、メキシコにSSC (Shared Service Center)を設立して業務を行っていくということがございます。また、複数の拠点を持つ会社はそれぞれの拠点で会計やその他業務があったものを1つの拠点に集約するということも行っています。
人事・会計・管理の再設計
そして人事や管理面を再設計することで隣国でも同様の業務が可能なように内部体制の整理、業務の標準化の推進というものを行っています。
なぜ今ここに移行しているのか
このような考え方自体は何年も前からあり、突然始まったわけではございません。ただ昨今の物価上昇や政治リスクといったものが目立つようになってきており、再度注目されているような印象です。米国に関して言えば、一般的に考えてアメリカよりメキシコのほうが人件費が高くなるということはないと考えられます。そこで、比較的人件費を抑えながらニアショアリングを利用することで長期的には会社の利益が増え、内部業務の精査・ステップの明確化というのも同時にこなすことができるようになります。
一次と二次では「失敗の原因」が異なる
- 一次:立地・人材・賃金
一次ニアショアリングでは、主に上記のようなことが重要になってきます。立地が悪ければ働く人材を十分に確保することができず、雇うために賃金を上げなくなったりしなくてはいけなくなります。そして特に輸送のコストも無視できない要素の一つです。
- 二次:管理・意思決定・制度
二次ニアショアリングの失敗要因としてよく上げられるのが上記の3つです。
管理体制が十分にできていないとそもそもニアショアリングを利用した意味がないほどに管理コスト、教育コストがかかってしまうケースもございます。意思決定については十分な基準がなければ現地で確認もなく勝手に物事が進んでしまい気づいたときには現地で重大な問題が起こってしまっていることも想定されます。
制度に関しては、米国の業務を行っている従業員の扱いという面でとても重要な部分になります。
どのように評価されるのか。どのように契約をするのか。どのようにその他のメキシコの業務を行っている従業員に納得してもらうような形で調整をするのか。といった様々な問題が起こりやすいです。
なぜ二次ニアショアリングではPOC「事前検証」が重要なのか
なぜニアショアリングを導入する前にPOC(事前検証)が重要なのかについて少し整理します。主な点としては3点です。
- いきなりフル移管の危険
いきなりフル移管をすると、導入時に同時発生しうる問題に対処できなくなる可能性がございます。
- POCという考え方
すべてを移管するのではなく、一部をあらかじめ移管する、スモールスタートをすることで実際の運用上の想定していなかった問題点、改善点を洗い出すことができるようになります。
- 判断材料を揃える重要性
上記のPOCプロセスを通すことで本当に行うべきか、移管が可能であるか、理論上と現場間の違いというものを直接に感じることができ、本格導入前によりアイディアや制度を整理することが可能になります。


No responses yet