メキシコ 就労ビザ(旧FM3)取得のプロセスについて

こんにちは。今回はメキシコで駐在員がいら変わる際に必要となる就労ビザの取得のプロセスについて書かせていただきます。

メキシコの日系企業へ赴任・転職する場合、原則として、メキシコで報酬を得て働くための在留資格が必要です。

一般に「TRT(Tarjeta de Residente Temporal)」や「旧FM3」と呼ばれています。

日本語では、「一時居住者ビザ」および「一時居住者カード」と説明できます。

メキシコの就労ビザは、日本国内のメキシコ大使館だけで完結するものではありません。まず、メキシコ側の雇用会社が移民局へ申請し、その後、本人が日本でビザ面接を受け、メキシコ入国後に在留カードへの交換手続きを行います。

本記事では、メキシコで雇用される日本人駐在員を想定し、就労可能な一時居住者ビザの取得手順、必要期間、会社側と本人側の役割を解説します。

本記事は、2026年6月時点で確認できるメキシコ国家移民庁(INM)および在外メキシコ公館の公開情報をもとに作成しています。実際の必要書類や運用は、申請先、個別事情、制度改正によって異なる場合があります。

メキシコの就労ビザ取得の流れ

メキシコの雇用オファーに基づく一時居住者ビザは、一般的に次の流れで取得します。

  1. 雇用会社のINM雇用主登録を確認する
  2. 雇用会社が必要書類を準備する
  3. 雇用会社がINMへビザ承認を申請する
  4. INMからNUTを含む承認通知を受ける
  5. 本人が駐日メキシコ大使館で面接を受ける
  6. パスポートに一時居住者ビザが発給される
  7. メキシコ入国後30暦日以内にプラスチックのカードへの交換を行う

重要なのは、会社側のINM申請が先にあり、その後に本人が日本でビザを申請するという点です。

メキシコ就労ビザの手続き一覧

手続き主な担当者手続き先
雇用主登録の確認・更新メキシコ側の会社INM
雇用オファーに基づくビザ承認申請メキシコ側の会社INM
承認番号取得後の面接外国人本人駐日メキシコ大使館
メキシコへの入国外国人本人空港等の入国審査
在留カードへのcanje外国人本人メキシコ国内のINM

以下、それぞれの手続きを詳しく説明します。

1.雇用会社のINM雇用主登録を確認する

最初に、外国人を雇用するメキシコ法人が、INMの雇用主登録を持っているか確認します。

この登録証明書は、スペイン語で次のように呼ばれます。

Constancia de Inscripción del Empleador

日本語では、「雇用主登録証明書」などと訳せます。

雇用オファーに基づいて外国人のビザを申請する場合、会社側には、適切に更新された雇用主登録証明書が必要です。INMの公式要件でも、更新済みの雇用主登録を持つことが申請条件として示されています。

雇用主登録で確認される主な情報

一般的には、次のような会社情報がINMに登録されています。

  • 会社の正式名称
  • 税務上の住所
  • RFC
  • 法定代表者
  • 会社の事業内容
  • 従業員情報
  • 税務申告や会社運営に関する情報

会社が過去に外国人を雇用したことがあっても、会社住所、法定代表者、税務情報などが変更されている場合は、登録内容の更新が必要になることがあります。

雇用主登録がない場合は、NUT申請の前に、会社側で登録手続きを行います。

詳しい内容はこちらの記事よりご覧いただけます。

2.会社が雇用オファーレターなどを準備する

雇用主登録の確認後、会社はINMへの申請書類を準備します。

ここで注意したいのは、雇用オファーレターはNUT発行後ではなく、INMへNUT取得申請を出す段階で必要になるという点です。

INMの公式要件では、雇用オファーに基づく申請について、主に次のような書類が示されています。

  • 外国人本人のパスポートのコピー
  • 会社の雇用主登録証明書
  • 会社のレターヘッドを使用した雇用オファーレター
  • 法定代表者の有効な身分証明書
  • INMの申請書
  • 必要に応じた手数料の支払証明

雇用オファーレターの主な記載事項

雇用オファーレターには、一般的に次の事項を記載します。

  • 外国人本人の氏名
  • 雇用会社名
  • 職種
  • 担当業務
  • 勤務地
  • 報酬額 等

職種や業務内容が曖昧な場合、申請内容について追加説明を求められることがあります。

また、パスポートと申請資料の間で、氏名、姓、パスポート番号、生年月日、国籍などが一致しているか確認することも重要です。

3.会社がINMへビザ承認を申請する

必要書類がそろった後、メキシコ側の雇用会社または正式な代理人が、INMへ次の手続きを申請します。

「雇用オファーに基づくビザ発給の事前承認」に相当する手続きです。

申請は、メキシコ国内のINMに対して行います。外国人本人が日本のメキシコ大使館へ直接オファーレターを持参するだけでは、通常この手続きを進めることはできません。

INMは、会社情報、雇用内容、本人情報、提出資料などを確認し、必要に応じて追加資料や説明を求めます。

INMの申請フォームでは、外国人本人の情報をパスポートどおりに入力する必要があります。

4.NUTを含むINMの承認通知を受け取る

INMが申請を承認すると、会社側に承認通知が発行されます。

この手続きでは、通常、NUT:Número Único de Trámiteと呼ばれる手続き番号が使用されます。

NUTはビザそのものではなく、INMで行われている個別の申請を識別するための番号です。ただし、実務上は「NUTを取得する」「NUTが発行された」と表現されることが多くあります。

NUTを含む承認通知が出た後、外国人本人は、指定された在外メキシコ公館でビザ面接を受けます。

NUTには期限がある

NUTの承認通知を受け取った後、いつでも領事館へ行けばよいわけではありません。

INMの案内では、雇用オファーに基づいてINMで承認された案件について、承認通知後の所定期間内に領事館での手続きを進める必要があります。

そのため、会社からNUTの通知を受け取ったら、本人は早めにメキシコ大使館の予約方法と空き状況を確認することが重要です。

5.駐日メキシコ大使館でビザ面接を受ける

日本に居住している申請者は、原則として、東京にある駐日メキシコ大使館の領事部でビザ手続きを行います。

駐日メキシコ大使館は、外国人向けビザ手続きの窓口や連絡先を公式サイトで案内しています。

本人が準備する主な書類

実際の要件は予約時に確認する必要がありますが、一般的には次のような書類を準備します。

  • ビザ申請書
  • 有効なパスポート
  • パスポートのコピー
  • 証明写真
  • INMから発行されたNUTの承認通知
  • 手数料
  • 日本国籍でない場合は日本での適法な滞在を示す書類
  • 領事館から指定された追加書類

原則として、申請者本人が領事面接に出席します。

面接で確認される可能性がある内容

面接では、次のような質問を受けることがあります。

  • どの会社で働くのか
  • どのような仕事をするのか
  • メキシコのどこで勤務するのか
  • 雇用期間はどのくらいか
  • 給与・報酬はいくらか
  • 会社とはどのような経緯で契約したのか
  • 過去にメキシコへ滞在したことがあるか
  • 学歴や職歴が業務とどのように関係するか

INMの承認を受けていても、領事館での本人確認や面接が省略されるとは限りません。

申請書、雇用オファーレター、本人の説明内容に大きな違いがないよう、事前に会社側と情報を確認しておくことが大切です。

6.パスポートに一時居住者ビザが発給される

領事館でビザ申請が承認されると、パスポートにメキシコの一時居住者ビザが貼付されます。

この段階で発給されるのは、メキシコで長期間使用する在留カードそのものではありません。

パスポート上のビザは、メキシコへ入国した後、INMで一時居住者カードへ交換することを前提としたものです。

雇用オファーに基づく一時居住者ビザは、180日を超え、最長4年までの滞在を予定する人を対象とする制度として案内されています。

7.メキシコ入国時にビザを提示する

ビザが発給されたら、その有効期間内にメキシコへ入国します。

入国審査では、パスポートに貼付された一時居住者ビザを係官へ提示し、在留カードへの交換を予定していることを伝えます。

INMも、仮ビザを持って入国する場合は、入国時にその旨を入国審査官へ伝えるよう案内しています。

観光目的の入国として処理されてしまうと、その後のcanjeで確認や修正が必要になる可能性があります。入国時の登録内容は、その場で確認しておくことが重要です。

8.入国後30暦日以内に仮ビザを正式ビザへ交換を行う

メキシコへ入国した後は、INMで仮ビザを正式ビザへ交換するという手続きを行います。

パスポートに貼られたビザを、メキシコ国内で使用する在留カードへ交換します。

この手続きは、原則としてメキシコ入国後30暦日以内に行う必要があります。

ここでいう30日は営業日ではなく、30 días naturales=30暦日です。土曜日、日曜日、祝日も含まれます。INMの資料でも、canjeの期限として30暦日が示されています。

canjeの主な必要書類

一般的には、次の書類を準備します。

  • INMのオンライン申請書
  • 有効なパスポート
  • パスポートのコピー
  • パスポートに貼付されたメキシコビザ
  • メキシコへの入国記録
  • 手数料の支払証明
  • INMが指定する追加資料

申請フォームは、INMの滞在手続き用ページから作成します。雇用オファーがある場合は、雇用主情報を入力する項目も設けられています。

INMのcanje手続きは予約が必要となる場合があります。INMも、canjeを予約対象の手続きの一つとして案内しています。

また、支局では、本人確認のほか、写真撮影、指紋採取、署名登録などが行われます。

手続きが完了すると、メキシコの就労ビザ(Tarjeta de Residente Temporal)が発行されます。

メキシコ就労ビザの取得にはどのくらいかかる?

会社がすでに雇用主登録を持ち、書類にも問題がなければ、会社側のINM申請開始から日本でのビザ発給まで、1~2か月程度が一つの目安です。

ただし、これは保証された期間ではありません。

次のような場合は、2~3か月以上かかる可能性があります。

  • 会社がINMの雇用主登録を持っていない
  • 雇用主登録の更新が必要
  • 会社住所や法定代表者の情報が一致していない
  • 雇用オファーレターの内容に不備がある
  • INMから追加資料を求められる
  • 駐日メキシコ大使館の予約が混雑している
  • 申請者のパスポート情報に不一致がある
  • 入国後のINM予約が取れない

そのため、赴任日や勤務開始日から逆算し、余裕をもって準備する必要があります。

会社側と本人側の役割

メキシコの就労ビザ手続きでは、会社と本人の役割を明確に分けることが重要です。

雇用会社が行うこと

  • INM雇用主登録の取得・更新
  • 雇用条件の決定
  • 雇用オファーレターの作成
  • INMへのビザ承認申請
  • NUTおよび承認通知の本人への共有
  • 必要に応じた追加資料への対応

外国人本人が行うこと

  • パスポート情報の提供
  • 駐日メキシコ大使館の予約
  • 領事面接への出席
  • ビザ発給後のメキシコ入国
  • 入国後30暦日以内のcanje
  • 在留カード取得後の内容確認

会社と本人の間で、氏名、職種、報酬、勤務場所、雇用期間などの認識が一致していないと、申請が遅れる原因になります。

メキシコ就労ビザ申請でよくある注意点

雇用主登録を持っているだけでは不十分な場合がある

会社が過去に雇用主登録を取得していても、会社住所、法定代表者、税務情報などが古い場合は、更新を求められることがあります。

NUT取得後にも期限がある

NUTが発行された後は、領事面接の手続きを速やかに進める必要があります。

NUTを取得したことで、すべての手続きが完了したわけではありません。

ビザ発給後も手続きは終わっていない

パスポートにビザが貼付されても、メキシコ国内で使用する在留カードを取得したことにはなりません。

メキシコ入国後、30暦日以内にcanjeを行う必要があります。

入国時のステータスを確認する

入国時には、観光ではなく、一時居住者ビザのcanjeを目的とする入国であることを伝えます。

パスポート表記と完全に一致させる

日本人の氏名は、スペイン語圏の姓の構造と異なるため、姓と名の登録位置に注意が必要です。

NUT、領事館のビザ、入国記録、在留カードの間で表記が異なると、その後の手続きに影響する可能性があります。

メキシコ就労ビザに関するよくある質問

メキシコの旧FM3とは何ですか?

FM3は、以前のメキシコ移民制度で使われていた呼び方です。

現在は、滞在目的などに応じて、主に「Residente Temporal」などの在留資格へ制度が変更されています。

現在でも、日本人の間では一時居住者カードを旧FM3と呼ぶことがありますが、正式名称ではありません。


NUTとは何ですか?

NUTとは、Número Único de Trámiteの略で、INMで行われる申請を識別するための手続き番号です。

雇用オファーに基づくビザの場合は、メキシコ側の雇用会社がINMへ申請し、承認後に本人がNUTを使用してメキシコ大使館でビザ手続きを行います。


NUTがあれば必ずビザを取得できますか?

NUTを含むINMの承認通知があっても、領事館での本人確認や面接が行われます。

申請内容の不一致、説明不足、書類上の問題などがあれば、追加確認が行われる可能性があります。


日本人は観光目的ならメキシコビザが不要ですが、就労もできますか?

観光や一定の非報酬活動のためにビザなしで入国できる場合でも、メキシコ国内で報酬を受け取って働けるとは限りません。

メキシコ企業から給与や報酬を受け取る場合は、雇用オファーに基づくビザや就労可能な在留資格が必要になるのが一般的です。


ビザ申請は日本国内だけで完了しますか?

いいえ。

一般的な雇用オファーに基づく手続きでは、まずメキシコ側の雇用会社がINMへ申請します。

その後、本人が日本のメキシコ大使館でビザ面接を受け、メキシコ入国後にINMで交換手続きを行います。


仮ビザの交換はいつまでに行う必要がありますか?

原則として、メキシコへ入国してから30暦日以内です。

土日・祝日を除く30営業日ではないため、入国後は早めにINMの申請書作成や予約を進める必要があります。


交換手続きが完了する前にメキシコ国外へ出国できますか?

在留カードの発行前に出国する場合は、通常の出入国とは異なる対応が必要になる可能性があります。

緊急の出張や帰国予定がある場合は、自己判断で出国せず、事前にINMへ確認することが重要です。


雇用会社が変わった場合はどうなりますか?

一時居住者が勤務先を変更した場合、INMへの変更通知が必要になることがあります。

INMは、一時居住者などが勤務先を変更した場合の通知手続きを案内しています。

転職後に何もしなくても自動的に情報が更新されるわけではないため、注意が必要です。


まとめ

メキシコの雇用オファーに基づく一時居住者ビザは、次の流れで取得します。

  1. 会社のINM雇用主登録を確認する
  2. 会社がオファーレターなどを準備する
  3. 会社がINMへビザ承認を申請する
  4. NUTを含む承認通知を受け取る
  5. 本人が駐日メキシコ大使館で面接を受ける
  6. ビザ発給後、メキシコへ入国する
  7. 入国後30暦日以内に交換手続きを行う

特に注意が必要なのは、次の3点です。

  • 雇用会社のINM登録が更新されているか
  • NUT承認後の領事手続きに遅れがないか
  • 入国後30暦日以内に仮ビザの交換を行っているか

メキシコの移民手続きは、会社情報や申請者の状況によって必要資料が変わることがあります。赴任日が決まっている場合は、早い段階で雇用主登録の状況を確認し、会社側と本人側の役割を整理しておくことが重要です。


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