こんにちは。
メキシコビジネスにおける労務管理の中で、多くの経営者や人事担当者様から「パフォーマンスの低い従業員の給与を下げたいが、可能か?」というご相談をよくいただきます。
結論からお伝えすると、「論理上(法律の隙間を縫えば)可能だが、実務上は極めて困難であり、リスクが高すぎる」というのが実態です。
今回は、なぜメキシコで減給料がこれほどまでに難しいのか、そして減給が難しい中で企業はどうやって人件費とパフォーマンスのバランスを取るべきなのかを解説します。
結論:論理上は可能、しかし実務上は「極めて困難」
メキシコにおいて、従業員の同意なしに一方的に給与を引き下げることは原則できません。
「どうしても減給したい」となった場合、理論上の手段と、それが現実的ではない理由を紐解いていきましょう。
1. 論理上「可能」とされる理由
メキシコの連邦労働法(LFT)には、「一度決めた給与を途中で引き下げてよい」という旨の規定はありません。しかし、法律上は以下のステップを踏めば理論的には可能とされています。
- 対象の従業員を「一度解雇」する
- 減給した条件で「新たな雇用契約を結び直す」
契約を一度リセットして結び直すため、論理的には新しい給与を設定できるという理屈です。
2. 実務上「難しい」と言わざるを得ない理由
問題は、この「一度解雇する」というプロセスにあります。
メキシコでは、会社都合で従業員を解雇する場合、莫大な解雇補償金(一般的に基本給3か月分+勤続年数に応じた手当+未払い分の有給・ボーナス等)の支払いが義務付けられています。
この補償金の支払いを免除(正当理由による解雇)とするためには、従業員側に重大な過失があったことを証明する強固な証拠(不当行為の記録や警告書など)を集めなければなりません。これには膨大な時間と工数がかかります。
企業側に残る致命的なリスク
万が一、証拠不十分とみなされたり、従業員から労働仲裁委員会(Centro de Conciliación)に不当解雇で訴えられたりした場合、企業側が敗訴するリスクが非常に高く、結果として減給で浮く金額以上のコスト(弁護士費用や追加の補償金)が発生する可能性が極めて高いのです。
パフォーマンスが悪い従業員への現実的な対策
「じゃあ、働かない従業員に高い給与を払い続けなければいけないのか?」と思われるかもしれません。減給が難しい以上、企業が取れる現実的な防衛策は「昇給させない」という選択肢です。
ただし、これも感覚だけで行ってはいけません。メキシコではインフレ率に伴う昇給の期待値が高いため、昇給させない場合には「なぜ上がらないのか」を客観的・論理的に説明できる明確な証拠(評価シートや業務未達成のデータ)が必要不可欠です。
減給を考えるより「昇給の仕組み」を考える方が100倍建設的
メキシコ労務において重要なのは、「一度上げた給与は二度と下げられない」という前提に立つことです。
減給の方法に頭を悩ませるよりも、「本当にこの従業員の給与を上げていいのか?」を慎重に見極める仕組みを作る方がはるかに建設的です。昇給を検討する際は、以下の3つの軸が揃っているかを必ず確認しましょう。
- 本人のパフォーマンス(成果の可視化)
- 会社の方向性(その職種やスキルが今後の経営に必要か)
- 明確な評価軸(誰が見ても納得できる基準か)
今こそ「人事評価制度」を見直すべき理由
近年、メキシコ進出企業の多くが、激変する外部環境や労働法改正に対応するため、社内人事制度の抜本的な見直しを行っています。「なんとなく」で昇給を決めてしまう時代は終わりました。
手遅れになる前に、自社の評価制度が機能しているか確認することをおすすめします。
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まとめ:出口(減給)を塞がれているからこそ、入り口(昇給)を固める
メキシコにおける従業員の減給は、実質的に不可能に近いリスクを伴います。だからこそ、給与を上げる際の人事評価制度をしっかりと整えておかなければ、後々ローパフォーマンス社員を抱え続けるという大変な事態になりかねません。
「守りの労務」から「攻めの人事制度」へ。自社の評価基準に不安がある方は、ぜひ一度見直しを検討してみてください。
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